無人島に生きる十六人

 人間ってすごい。
 この本は明治32年ミッドウェー島の近くにあるパールアンドハーミーズ環礁で日本の帆船「龍睡丸」が座礁し、無人島に上陸した乗組員たちの奮闘の記録です。生協においてあったのを何となく面白そうだったので買ってみました。
 北方領土の漁師さんが冬の間船が遊んでいるのはもったいないと小笠原の方に調査に行ったまでは良かったのですが、時化で船が損傷して東に流されてしまい、風が強く戻ることができず。仕方がないのでハワイはホノルルに向かい、何とか到着し現地の日本人の助けのおかげで船を修理することができました。しかし、日本に戻る途中、また時化にあってしまい、パールアンドハーミーズ環礁に座礁してしまいます。
 草地と砂浜だけの島で魚やウミガメをとって暮らすのですが、迎えの船が来る保証がない中でも前向きでむしろ島の生活を楽しむように生きている。さらには島で生きているだけでは甲斐がないと勉強までやっている。全く頭が下がります。
 時化の海の恐ろしさや、海洋島の生き物の雰囲気などが、生き生きと描かれていて興味深い読み物です。このころは小笠原が日本に属して間もないらしく、日本に帰化した小笠原の現地民(アメリカの捕鯨船の子孫)の船員が日本人の船員に英語を教えるとか、時代を感じますな。
 ちなみにパールアンドハーミーズ環礁はこちら
 いやーとても面白い本だったのですが、ただ1つ残念だったのは、実はこの本が著作権が切れた本をウェブで公開している「青空文庫」に収録されていたということですね...。あはは。
 南極で遭難して1年8ヶ月かけて生還した「エンデュアランス号漂流」もそうだけど、実話の持つ迫力はすごい。こういう本を読むと、そうやすやすと絶望できませんよ。