花よりもなほ

 しあわせな映画であった。
 父の敵を探すため江戸にでてきた青年と、青年の住む長屋の人々の喜怒哀楽。社会的にはあまり陽のあたらない人々に対する愛がしみじみと感じられます。
 日常のなんでもないようなシーンでも観ていて飽きない。これは監督の徹底したこだわりのせいではないかと思う。是枝裕和 監督の前作「誰も知らない」同様、「日常」を映画の中で表現するのは実は非常に難しいことなのではないだろうか。日常的であればこそ、それを描こうとするには敏感な感性と観察眼が必要であるように思う。その日常の「雰囲気」を再現するため監督はきっととても気を使っていたのだろうと想像した。
 ただ見る前に一つ不安だったのは、前作「誰も知らない」は観終わった後、気分がブルーになっちゃったので、今回もそれだったらやだなということでした。しかし、今作はそのようなこともなく幸せな気分で映画館を出てこれたので、こちらはみんなにお勧めできそうです。
 見所はやっぱり宮沢りえのたすきがけシーンですね(キッパリ)。「たそがれ清兵衛」でもその筋の人々を狂喜させたという宮沢りえのたすきがけシーンですが、「たそがれ清兵衛」ではほんのワンカットだけだったのに対して、この映画では何度も楽しめます。必見です。
 その他、今が旬らしい主演の岡田君はかっこいいなと思いました、他の脇役の人たちもそれぞれいい味出してました。仙台ではシネ・ラヴィータで上演していますが、もうすぐ終わってしまうので興味のある方はお早めにどうぞ。

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