「南硫黄島探検記」覚え書き

すごすぎる。
C葉先生が東京都と首都大のプロジェクトのメンバーとして南硫黄島の生物調査に行った報告を聞いた。C葉先生は当然陸産貝類の担当。

 南硫黄島は、あの話題の映画の舞台である硫黄島の南にある。海岸線が断崖絶壁となっており、付近の海も荒れていることが多いらしく、これまでほとんど人が入ったことがない。学術調査も1936と1982の2度しか行なわれたことがなく島の生物相は詳しくはわかっていなかった。今回は1週間程度滞在して植物、昆虫、鳥類、海洋生物、陸産貝類などの生息を調査したそうだ。

 野外調査では歴戦の猛者であるC葉先生だけど、今回はマジで危険(島には船で近づいて泳いで上陸、平均斜度45°の急斜面&島の周囲は100mくらいの断崖絶壁、岩はもろくて落石多発、場所によっては50℃を越える猛暑&湿度100%)なので事前に遺書まで用意していたらしいです。準備も1年程前から行なっていたそうで、体力作りやクライミングや泳ぎの練習、応急処置の訓練など、サンダルで小笠原に行ってるいつものC葉先生とは見違える程の用意周到ぶり。さらに、島での登山ルート開拓のための山岳サポートの方や資材を陸揚げサポードやNHKの記録班などチームの半分以上はサポートメンバーからなっているということも、通常の調査とは違う今回の調査の危険性を示しているとのこと。

 調査自体は天候に恵まれたそうで、上陸の際は海も穏やかで比較的容易に資材の陸揚げなどもできたそうです。海面から標高900mの山頂まで一気に盛り上がる様は、圧倒される迫力があるそうな、見てみたいですね。で肝心の生物の方はというと、もうスペクタクルですよ。本当に(比喩ではなく)手つかずの海洋島の姿が現在も残されている。山頂付近の雲霧林には島固有の木生シダが林をつくっているなど結構豊かな植生をもっており、小笠原諸島ではほとんどいなくなってしまったオガサワラカラスバトオガサワラオオコウモリがバサバサ飛んでるそうです。しかも人を恐れないらしく至近距離で写真が撮れ、通常は考えられないくらいのクローズアップ写真が満載でした。すごいのはオガサワラオオコウモリが飯を食った後「地上で」ウトウトしていたりするらしい...。アリエナイ。さらにアナドリ、アカオネッタイチョウシロハラミズナギドリ、カツオドリなどの海鳥の巣も大量に存在しているそうだ。C葉先生の陸産貝類も以前の調査では見つかっていなかった種を沢山発見し、固有種も何種かいたそうです。昆虫や植物など陸産貝類以外の生物については詳しくはわからなかったのですが、それぞれ新しい発見があったみたいです。

 C葉先生曰くNHKの人が映像を編集していずれ番組にまとめるとのことですので、非常に楽しみです。皆さんもお見逃しなく。

 いやー。日本にもまだこんなところがあったのですなぁ。こんな話しが身近に聞けるなんて、大学ってのは良いところですよ。